よくわかる最新音楽の仕組みと科学 岩宮 眞一郎(秀和システム)
1.仕組みとおきて
(1)楽譜
9世紀グレゴリオ聖歌から
(2)ピッチ
①440HzがA4、その1/8がA1、1/4がA2、1/2がA3、2倍だとA5(オクターブ上)etc
②20〜20KHzが可聴範囲と言われるが、実際は最高音3〜4KHz程度(ピアノ最高音の基本周波数は4,186Hz)
(3)音圧
fff(フォルテシッシモ):100db
f(フォルテ):80db
p(ピアノ):60db
ppp(ピアニッシシモ):40db
2.主音(キー)の見つけ方
(1)音階(スケール)の中の最低音を探す
→特に長三和音ド、ミ、ソの使用頻度が高いはず
(2)長調ならド、短調ならラの音
(3)とりあえず冒頭(最初)の音を主音と捉える
→ただし、その後、違和感が生じたら、別の音を主音候補にする
(4)聴き始めてから7、8音目あたりまでに主音がどれかを決定する
→これまでに聴いてきた音楽のスキーマ(枠組み)から認知している
(5)ゲシュタルトの構成要因
①近接(近くにある者同士は同じグループとみなす):ピッチが近い
②類同(似ている者同士は同じグループとみなす):楽器の種類が同じ
③閉合(互いに閉じ合う関係同士は同じグループとみなす):終わり方が同じ
④連続(なめらかな連続を形成するものは同じグループとみなす):ピッチの変化、動きが同じ
⑤経験(しばしば同じような経験をする者同士は同じグループとみなす)
3.ピッチ感覚
(1)トーン・クロマ
ドレミファソラシドとオクターブまで行くと、元に戻ったような感覚のピッチ感覚
(2)トーン・ハイト
ドレミファソラシドレミファソラシド〜と直線的に上昇するピッチ感覚
4.音階
(1)テトラコルド(テトラコード)
①長音階なら「ドレミファ」と「ソラシド」に分ける
②2つの「全音→全音→半音」という音程関係だと解釈
5.転調(近親調)の種類
(1)同主調:ハ長調→ハ短調(主音が同じ)
(2)平行調:ハ長調→イ短調(調号が同じ)
(3)属調:ハ長調→ト長調(属音が主音)
(4)下属調:ハ長調→へ長調(下属音が主音)
→上記以外は遠隔調となり、意外性のある印象を与える
6.ハーモニー
(1)ピタゴラス音律
①オクターブ(1:2)、完全4度(3:4、C→F)、完全5度(2:3、C→G)
②全音(8:9)、半音(243:256)
→半音を2回掛けても全音にならない
③C→D:8:9、C→E:8×8:9×9=64:81、C→F:64×243:81×256=3:4
④C→G:3×8:4×9=2:3、C→A:2×8:3×9=16:27、C→B:16×8:27×9=128:243
⑤C→C:128×243:243×256=1:2
(2)ピタゴラスコンマ
①完全5度の音程を12回繰り返す
C→G→D→A→E→B→F#→C#→G#→D#→A#→F→C
2:3の周波数比だと、わずかに高くなってしまう(Cから7オクターブ上のCだと半音の1/4程度)
(3)平均律
半音の周波数比は1:12√2、全音は6√2となり、半音を3回掛けると全音となる
7.リズム
(1)最適な周期
①120ミリ秒から1800ミリ秒の範囲なら周期的と感じられる
②120ミリ秒以下だと短過ぎ、1800ミリ秒以上は長過ぎでリズムとしてまとまりが感じられなくなる
(2)最適なテンポ
①600ミリ秒程度(1拍0.6秒、BPM100)の間隔で繰り返されるテンポがちょうど心地よいテンポ
②実際は個人差があるため380〜880ミリ秒程度とバラツキあり
8.感動
(1)スキーマ
①心の中にできる感動をもたらす枠組みの事(例:T→SDもしくはD→Tで解決)
②ただし、決まりきった規則通りのスキーマばかりだと退屈になる
→適度な音楽展開のはぐらかし、先延ばし(意外性、裏切り)が必要
(2)代理的な悲しみ
(日常生活で起きる)本当の悲しみは耐え難いが、
音楽による擬似的(代理的)な悲しみは快楽となりうる
(3)ドーパミン
①音楽で快楽物質が放出される
②ドーパミンが不足すると鬱になる事もある
(4)芸術的逸脱
①良い演奏家はピッチやタイミングにより良いゆらぎを持たせている
②合奏する場合、演奏者間で適度なズレがあった方が、厚みのある音になる
9.活用する
(1)サイン音
例:緊急地震速報(伊福部 達)
→C7#9、C#7#9の分散和音
(2)音楽療法
同質の原理(患者の気分と合致した性質を持つ音楽を聴かせる)
→うつ状態の時は鎮静的、躁状態の時は高揚的な音楽
→固くなった心に一瞬でもたるみを与え、自己治癒力が働くきっかけとなる
10.目的(意味、価値)
(1)求愛行動(ダーウィン)
例:歌垣(決まった日時に若者が市場や高台に集まり、性的解放する)
(2)集団連帯感を形成
例:集団での歌と踊り
(3)ストレス解消
①リラクゼーション効果
ゆったり静かな音楽よりも好みの音楽の方が効果が高い
→刺激が強い音楽でも繰り返し聴くと、リラックスできる
②テストステロン(攻撃性、性行動)抑制
(4)ピンカーの仮説(スティーブン・ピンカー)
①音楽は生態にとって価値はない
②音楽は快感を求める行為に過ぎない(聴覚のチーズケーキに過ぎない)
11.今後のテクノロジー
(1)オートチューン
本来はボーカルのピッチ補正
→歌声をロボット風ケロケロ声にする(例:Perfume)