理性の限界 高橋 昌一郎(講談社現代新書)
理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
- 作者: 高橋昌一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/06/17
- メディア: 新書
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1.選択の限界
(1)コンドルセのパラドックス
勝ち抜き戦の順番を変えると順位も変わる
→例:ジャンケンの3人だと最後の参加者が必ず優勝する
①グーvsチョキを1回戦とすると、2回戦がグーvsパーとなりパーが優勝
②パーvsチョキを1回戦とすると、2回戦がチョキvsグーとなりグーが優勝
(2)囚人のジレンマ
①TFT(ティット・フォー・タット)(ラパポート)
3行プログラムで最強(初回は協調し、次回は前回の相手と同じ、以下繰り返すだけ)
②ナッシュ均衡
どちらのプレーヤーも裏切るのが最適
(3)チキン・ゲーム
①両者共に裏切ると最悪(例:米ソ冷戦からの核保有国同士の構造)
②ナッシュ均衡
何れかのプレーヤーがゲームを降りるのが最適
③社会的チキン・ゲーム(例:救命ボートから誰か一人降りないと全員死亡)
集団的合理性(誰かが犠牲になる)と個人的合理性(自分以外の誰かが犠牲になる)は完全に一致しない
2.科学の限界
(1)ラプラスの悪魔(機械論的決定論)
ある時点の宇宙全ての原子の位置、速度を知れば、その後の未来全て予測できるという考え方
(2)光速度不変(相対速度が不成立)(マイケルソンとモーリーの実験)
①地球の南北方向と東西方向で光速度不変を確認
②東西方向に考慮すべき地球の公転速度(30km/s:光速の約10万分の1)を考慮しても、変わらなかった
(3)ハイゼンベルクの不確定性原理
ミクロ(距離の短いもの)を観測するには波長の短い電磁波が必要
しかし、電磁波長を短くするほどエネルギーが高くなり、観測対象の位置を乱してしまう
(4)EPRパラドックス
2つの光子間で光速を超えた情報交換が観測された
3.知識の限界
(1)ゲーデルの不完全性定理
どんな完全なシステムでも決定できない問題(命題)が、そのシステム内部から生まれる
→例:ナイト(彼らの発言は全て真)とネイブ(彼らの発言は全て偽)の住人問題
①「私はナイトでない」発言はどちらの住人か決定できない
②ナイトでありネイブでもある者がいない事の証明はできない
(2)自然数論にある証明も反証もできていない命題
①ゴールドバッハの予想(4以上の偶数は素数の和である)
②奇数の完全数があるかどうか
(3)ランダム性(無作為、不規則、予測不可能)
①直感的に理解できるが、数学的に定義できない
②nビットのシステムでは、nビットより長いコードのランダム性は証明できない
→システムにインプットした以上のランダム情報はアウトプットできない