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米国製エリートは本当にすごいのか? 佐々木 紀彦(東洋経済新報社)

米国製エリートは本当にすごいのか?

米国製エリートは本当にすごいのか?

 

1.米国の大学
(1)「成績が悪いと退学」というのは神話(C以下は全体の1割程度)
(2)大学が生徒をどんどん退学させてしまうと、授業料を払う客がいなくなってしまうから退学させない
(3)優秀なのはロースクールか博士課程の学生のみ
(4)一流大学の学歴を重視している理由は人脈(コネ)作りのため
(5)スタンフォード留学生の5割がアジア人(ただし、中国、インド、韓国)

2.中国が(当分の間)戦争をしない理由
 一人っ子政策の世代では、親が大事な一人息子を戦地へ送りたくないはず

3.米国流教育
(1)強み
 ①演繹的に物事を考える力が鍛えられる
 ②限られた情報から物事を予測する能力が鍛えられる
(2)弱み
 ①仮説設定に時間をかけ過ぎる(抽象的思考の時間かけ過ぎ)
 ②現場のニーズからの乖離(現場感覚の欠如)

4.格差社会の国別比較
(1)米国は成金の国(経済力をつけてから政治へ)
 上位の10%で米国総所得の50%を稼いでいる(2007)
(2)中国は不動産とコネの国
 1億元(16億円)以上の個人資産を持つ中国国民のうち90%が政府高官の子息
(3)戦前の日本
 ①上位1%が国全体の20%の富を握っていた
 ②特に農村部の疲弊がひどく、青年将校の恨みが2.26事件に繋がる

5.米国と日本のビジネスの違い
(1)米国はベンチャーに失敗しても1千万円以上稼げる仕事(転職の確実性)に戻れるという保証がある
(2)日本は新卒採用の一発勝負で一生が決まってしまう
 →今後は米国流の雇用の流動化(転職、復職しやすくする)が必要かもしれない
(3)米国人はアイデアをインスティチューショナライズ(制度化)させる事に執着する
(4)日本人はデザイン力(アイデア)はあっても、それを製品として構成させるまでの能力に乏しい

6.日本人留学生の減少原因
(1)少子化(1997→2010で留学適齢期の人口が約2割減)
(2)IT(シリコンバレー)、野球、ハリウッドの特殊業界を除いてアメリカへの憧れがなくなった

7.米国のインテリジェンス
(1)CIA
 CIA前身のOSS(戦略情報局)は日本からの真珠湾攻撃を予測できなかった反省から作られた組織
(2)CIA以外にも国務省、司法省など17のインテリジェンスコミュニティ(17万人)がある
 2010年度の予算が531億ドル(日本の50倍)

8.将来予測のポイント(ポール・サフォー)
(1)コンシステンシー(不変性)
 過去から変わっていないものに注目する
(2)サイクル(循環)
 似たようなバイオリズムを掴む
(3)ノベルティ(新規性)
 全く新しい技術(インターネット、核兵器など)

9.ガラパゴスな米国
 米国民のパスポート保有率28%であり、日本と同様にガラパゴス(日本は25%、英国は70%以上)

10.知力
(1)良い素材を調達する力
 ①知識・情報収集(インプット)力
 ②膨大な情報から上質のものを選びとる力
 →オープンコースウェアのサイト(5371コースが無料閲覧可能)にある有名教授の授業のシラバスがよい
(2)良い素材を組み合わせ、うまく調整、調理する力
 地頭、センス(先天的な力)
(3)出来上がったものを確認し、改善する力
 他者との対話・表現(アウトプット)力
 →ある程度スキルがつけば、誰でも同じレベルとなる