2013年以前のブックレビューも随時追加中

私とは何か 平野 啓一郎(講談社現代新書)

1.本当の自分と分人
(1)そもそも一人の人間は、複数の分割可能な(dividual)存在である(分人)
(2)たった一つの本当の自分、ブレない自分などというものは存在しない(分人それぞれが本当の自分)
(3)人のある一面だけが、本質(で他は仮面、ペルソナ)という事はない
(4)相手次第で、自然と様々な自分になることを肯定すること
(5)八方美人は相手との相互作用(分人化)しておらず、誰に対しても十把一絡げに扱う人の事
(6)たとえ一人でいる時でも、入れ代わり立ち代わり様々な分人として考え事をしている

2.個性と職業
(1)教育現場で個性が尊重される理由
 個性を伸ばして社会に出る(=職業に結びつける)事を教育目的としているため
(2)職業と個性の多様性矛盾
 職業の多様性は個性に合わせて増えたものではない
 (例:郵便局やコンビニが世の中に増えたのは必要性があったからで、そこで働く事が好きな人が多くいたせいではない)

2.人格と個性
(1)人格とは、複数の人と反復的なコミュニケーションを重ねていくうち形成される一種のパターンの事
(2)生まれつきの核となる個性はなく、現在付き合っている複数の相手から影響された分人の構成比率で個性は決定される
(3)一つの個性(人格)だけで生きようとする人生はハイリスク(現在の社会は複雑なため)
 こっちがダメなら、あっちがある的生き方でよい

3.自分と他者
(1)(自己肯定できる)ポジティブな自分になっているのも、半分は他者のお陰(=感謝、謙虚すべき)
(2)(自己否定、自己嫌悪してしまう)ネガティブな自分になっているのも、半分は他者のせいだと考えてみる(=過度に卑屈になる必要なし)
 あるときの自分(分人)の中に1つか2つ好きなところがあれば、そこを足場に生きていけばいい
(3)自分が好きでいられる時の対象の相手は必ずしも生きた人間でなくともよい(例:森鴎外ショパン
(4)分人主義とは、自分と他者は互いに影響しあって分断不可能な関係だと考えること

4.愛すること
(1)愛とは、その人といるときの自分(分人)が好きになるという状態の事
(2)その人がいると、自分自身が好きでいられる
(3)同時に自分の存在によって、相手も自らを愛せるようになっている