2013年以前のブックレビューも随時追加中

正義の教室 飲茶(ダイヤモンド社)

正義の教室 善く生きるための哲学入門

正義の教室 善く生きるための哲学入門

  • 作者:飲茶
  • 発売日: 2019/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

1.悪の種類
(1)不平等
 人間を差別して平等に扱わない行為
(2)不自由
 人間の自由に生きる権利を奪う行為
(3)反宗教
 宗教または伝統的な価値観を破壊する行為

2.正義の種類
(1)平等
 功利主義(幸福を重視する)で平等を実現する
(2)自由
自由主義(自由を重視する)で自由を実現する
(3)宗教
 直観主義(道徳を重視する)で宗教(の正義)を実現する

3.功利主義
(1)一人ひとりの幸福、不幸はそれぞれ一人分として平等に計算する(王様も奴隷も同じ一人分)
(2)最大多数の最大幸福(恵まれた人には少なめの利益を、貧しい人には多めの利益を与える)
(3)恵まれた人から強権的に利益を奪い、貧しい人に与えるシステム(国家)が必要となる
(4)問題点
 ①人それぞれ異なる快楽の種類は 標準化、定量化できない(例:ラーメン一杯の幸せの量は人それぞれ、状況により異なる)
 ②快楽の性質上、同じ快楽を100回増やしても100倍にはならない

4.自由主義
(1)弱い自由主義リベラリズム
 ①弱者に優しい福祉社会を目指す
 ②幸福を実現するために自由を尊重する考え方(=実態は功利主義と変わらない)
(2)強い自由主義リバタリアニズム
 ①弱肉強食の自由競争を推進する
 ②(他者の自由を奪わない事を前提とした)自己の自由を尊重する考え方
 ③富の再分配(恵まれた人から強権的に利益を奪う事)は禁止される
(3)問題点
 ①富の再分配禁止(格差拡大)による弱者排除
 ②幼児や麻薬患者にも自由意志(危険な行動)を尊重させてしまう
 ③自己責任、個人主義横行によるモラル低下の可能性

5.直観主義
(1)宗教的であるとは
 ①神さまの存在自体を信じられるという事(特定の宗教を信じるかどうかは無関係)
 ②物質(=宇宙全体)、理性(=言葉の世界)を超えたところに何かがあると信じられる事
(2)直感とは
 言葉や理屈で説明できない(=超えたところにあるもの)でも知る(=直ちに観る)事ができる力の事
(3)道徳的とは
 人間が打算なしで瞬間的に判断できるもの
(4)原罪(アダムが食べた知恵の実)とは
 本当は「善悪の実」(つまり、善悪を知ることが知恵をえること)
(5)イデアとは(プラトン
 ①言葉や理屈で説明できない絶対的な概念の事
 ②人間や宇宙の存在がなくともイデア(例:数学の定理「三角形の内角の和は180度」)は存在している
 ③イデア(概念)そのものを成立させている根本のイデアを善を呼ぶ(正しいこと、真実である事の上位概念に「善いこと」がある)
 ④何を考え、何を疑おうとその思考の中に善を求める意志がある事自体は否定できない
(6)神の存在証明(デカルト
 不完全な存在である人間が神という完全な存在を知っているのは、
 神の存在を何らかの方法で教えてもらったと考えるしかない(=つまり神は存在していないといけなくなる)
(7)神は死んだ(と考えろ)(ニーチェ
 ①神、善、道徳は、支配者が弱者を大人しく抑圧するために作った人工物、偽物の価値観に過ぎない
 ②理想的な神、政治思想を持つ者ほど、大量虐殺をしてきている
(8)死に至る病キルケゴール
 人間は有限で不完全な存在だから、絶対的な善、正義を知ることも実行もできない(=絶望しかない)

6.構造主義
(1)人間は何らかの社会構造(システム)に支配されており、自由に意思決定する事はできない
(2)人間がどう考えるかは、その人が生きる社会システムによって、無意識に形作られている
 →例:人間を水、社会をコップや花瓶に置き換えて考えてみる
(3)ポスト構造主義フーコー)と現代社
 市民の誰もがスマホを持っている社会(システム)は、相互監視により自由がなくなり、しかも破壊不可能なシステムとなっている