統計数字を疑う 門倉 貴史(光文社新書)
1.一世帯平均貯蓄残高(2005年)
(1)通常平均では1728万だが、メディアン(データを小さい順に並べた時の中央値)では1052万
(2)平均1728万以下の世帯が約三分の二を占めている
(3)モード(データをクラス分けして最も割合の多い最頻値)では200万以下(全体の4.1%が集中)
2.平均
(1)幾何平均
①増加倍率を平均化する時用いる(金利など)
②1年目に2倍(100万→200万)、2年目に8倍(200万→1600万)になった場合、
平均(2+8)/2=5倍は間違い(2年で2*8=16=4*4だから平均4倍)
(2)調和平均
①時速や燃費等の平均を求める時用いる
行き時速3km、帰り時速5kmで走った時、
平均時速(3+5)/2=4kmは間違い(2/(1/3+1/5)=3.75km)
(3)加重平均
①日経平均株価
ウエイトが同じため、5千〜1万円程度の値がさ株(ハイテク企業)の動きに影響されやすい
②東証株価指数(TOPIX)
時価総額でウエイトしているため、時価総額の大きい銘柄(銀行、証券など内需企業)に影響されやすい
3.平均寿命
(1)今年生まれた人(0歳児)があとどれだけ生きられるかの平均(平均余命)
(2)平均寿命80歳として、今30歳の人が50年生きられるのが平均という訳ではない
(3)その年1年の年齢別人口と死者数で求めている
4.労働
(1)有効求人倍率
①近年では上振れしやすくなっている(実際はそんなに高くない可能性あり)
②有効求職者数はハローワーク登録者のみの人数のため、少なめに出やすくなった
③民間機関やネット登録の求職者が含まれていない
④失業者の77.3%しかハローワーク登録されていない
(1980年では1人で複数登録もあるため、100%超だった)
(2)労働時間
①1980年2145.6時間、2005年1802.4時間
②実際は90年代以降、(労働時間の少ない)非正社員を労働時間に反映したため
5.犯罪
(1)刑務所収容率
①近年100%超の理由は治安悪化でなく、老人・ホームレス増加が原因
②ホームレス自体、50〜64歳が多く、刑務所収容者の多くが老人
(2)検挙率
①1990年43.3%だが、2001年19.8%、2005年28.6%と低下傾向
②凶悪犯検挙率は2005年65.3%と高い
③殺人罪検挙率は2005年96.5%と高い
④軽犯罪である刑法犯の8割を占める窃盗は2005年28.6%と低いまま
→余罪も多く、全体の検挙率を押し下げている
6.国際
(1)GDPとGNP
①GDPは国別、GNPは人別の生産
②日本のGDPは国内(日本人+外国人含む)の生産
③日本のGNPは日本人全体(国内+外国在住含む)の生産
④海外での現地生産を増やしても、GDPには反映されない
(2)経常収支
①世界全体の経常収支(世界中の経常黒字と経常赤字を足す)がゼロにならない
②世界全体の経常収支は2000年で1783億ドル(約19.2兆円)、2005年で873億ドル(約9.6兆円)の赤字
③赤字は申告しても黒字分(利子所得)は全て申告されていないと推定(MITクルーグマン)
(3)経常移転収支
①在日外国人の母国への送金等
②2006年の送金額1位ブラジル(208億円)、2位中国(189億円)、3位韓国(22億円)
③在日人口では1位韓国(29.8%)、2位中国(25.8%)と二国だけで半数以上占めているのにブラジルより送金額が少ないのはおかしい
→地下銀行経由で送金している分が統計に出てこないため