2013年以前のブックレビューも随時追加中

ハーバード白熱教室講義録 マイケル・サンデル(早川書房)

 

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)

 

 

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)

 

 1.懐疑主義の言い訳

(1)これまでいろんな人が長年かけて議論してきて解決できていないのだから、今後も解決できないと諦めること
(2)懐疑主義や理性の休息所だが、永久に留まる場所ではない(カント)

2.リバタリアニズム論者
(1)父親的な干渉主義の否定
(2)社会全体としての道徳的価値観の否定
(3)裕福な者から貧しい者への所得再分配の否定

3.公正な所得再分配ノージック
(1)取得の正義(収入を得る方法が公正であること)
(2)分配の正義(分配方法が自由な意思決定であること)

4.自律的な自由(カント)
(1)周りからの刺激や飢え、欲望、快楽のまま他律的(ヘテロノミー)に行動しない
(2)真の自由とは、自律的(オートノミー)に自分の意志を持って義務(○○せよという命法)として行動すること
(3)人間は自律的に行動できるがゆえに、尊厳ある存在といえる
(4)道徳的価値は動機が良心的であり善意であったかどうかで決まる
(5)人が持つ根源的な動機に良心や善意(純粋実践理性)があるのは普遍的に共通である(その人の経歴や環境、利益の大小とは無関係)
→良心や善意が全ての人の持っている道徳的価値であるなら、それには全ての人が従うべきである
(6)純粋実践理性は、経験的な目的(特定の価値観や利益)よりも先立って(アプリオリ=先験的に)存在する
(7)仮言命法(例:悪い噂が立つかもしれないから、お客のお釣りはごまかすな)だと目的のために手段を選んでいるため、真の自由ではない
(8)定言命法(例:自分の利益、欲望を他者より優先させるな)は他者を利用する(手段)だけでなく、目的としても扱う(尊厳ある者として敬意を持って対する)

5.能力主義と正義
(1)格差原理(ジョン・ロールズ
 ①恵まれた者は恵まれない者へ所得の一部を再配分するのであれば、その幸運から便益を得ることが許される
 ②恵まれた者が払ってもなお残るインセンティブと、恵まれない者が得られるインセンティブのバランスが重要(でないと、何れも働かなくなってしまう)
 ③共産主義社会主義のように完全な平等を目指すわけではない(最下層の人間に基本的自由の権利は与える所までの平等主義
 ④各個人の所得、功績を完全に自己所有する事はできない(人が生まれてから、家庭、公共、企業などから得られたものがあるため、得たもの全て自分だけの功績とは言えないから)
(3)機会均等にしたとしても、結果均等まではできない(ミルトン・フリードマン
 人生は不公平だが、それぞれ与えられた状況の中で最大化できるよう努力が必要

6.アファーマティブ・アクション積極的差別是正措置)
 人種や収入などに関係なく多様性や平等を重んじるために、敢えて是正すること(例:マイノリティ、低収入家庭を優遇して入学、採用する)

7.目的論的論法(アリストテレス
(1)正義とは目的に適した人に適した物を与えることである(例:最も優れたフルートは最も演奏の上手なフルート奏者に与えられるべき)
 正義とはその中に既に差別を内包している(ただし、差別はその卓越性、美徳の差から起因している)
 →ただし、目的に適していても、本人が拒否する権利(自由)は残すべきではないか(サンデル
(2)政治とは市民に善き生をもたらすこと
(3)美徳(コツ)とは、やってみないとわからないものの事(例:料理、楽器演奏、スポーツなど)
(4)政治のコツを得るためには、善の本質について議論するしかない