USJを劇的に変えたたった1つの考え方 森岡 毅(角川書店)
USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門
- 作者: 森岡毅
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2016/04/23
- メディア: 単行本
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1.日本のマーケティング
(1)マーケティングは自由主義経済のアメリカで生まれた実践学
企業が生き残るための知恵を体系立てたもの
(2)日本の当局規制と終身雇用にマーケティングはなじまなかった
①政府や役人規制ありきの市場のため、過度な競争を避け、既得権を互いに確保するだけ(マーケティング不要)だった
②日本にいなかったマーケターは中途採用するしかなく、それが終身雇用の組織になじまなかった
(3)ハイテク業界ほどマーケティングしなかった
①「良い製品を作れば売れる」と信じていた日本の製造業自体、マーケティング力が必要とならなかった
②ローテク業界(例:ミネラルウォーター、シャンプー)は技術以外の商品差別化が必要なため、マーケティングは必須
(4)精神主義重視の戦略(合理性が足りない)
①英語ではMind(理性)とHeart(感情)は明確に区別されているが、日本は「心」で一体化されてしまっている
②情緒的な意思決定をしがち(周囲への配慮、属人的な繋がりを意識した全体の和を重視)
2.日本の人事
(1)弱点克服重視の人事
(2)自分の素質からくる弱みは変えようのない弱点(上司からどれだけ指摘されても克服するのは無駄)
(3)ただし、弱点克服により自分の強みをより強化できるのであれば、チャレンジすべき
→克服できる可能性が高い弱点(強みをテコにして弱点克服)
3.自分の強み(素質)を知る方法
(1)普段取っている「好きな行動」「得意な行動」を書き出してみる
(2)カテゴリ分けしてみる
①リーダーシップ(統率力)
②思考力
③対人関係(コミュニケーション力)
④革新、創造力
⑤行動、任務遂行力
⑥その他(専門スキル)
4.マーケティングの本質
商品を売るのは営業、売れるようにするのがマーケティング
5.戦略
(1)目的を達成するために資源(リソース)を配分する「選択」(What:何を選んで何を捨てるか)のこと
(例:カレーすき焼きを作るのでなく、カレーかすき焼きどちらかを作ること)
(2)経営資源(リソース)
①カネ、ヒト、モノ(設備など)、情報(市場、消費者情報など)、時間、知的財産(ブランドなど)
②資源は増減する
(例1:社内で有効に使えるお金があるのに、使用する意思決定できないと持ち腐れ)
(例2:ユニークな長所を持つ部下がいても、上司が活用しなければ持ち腐れ)
(3)選択と集中
①A軍100人にB軍80人が5部隊ずつ分かれて勝つ方法
→普通だと全部隊20人対16人となり全てA軍の勝ち
→B軍が勝つには、30人、25人、25人の3部隊に分け、残り2部隊は0人(完全放棄)とする
→A軍が20人編成のままなら、20人対30人、20人対25人、20人対25人で5部隊中3部隊でB軍が勝てる
②勝てるライン(Sufficient line)の見極めが重要(①の例だと20人超が勝てるライン)
③仕事が10個あったら全て100点を取ろうとしない(全て100点取ろうとした結果、全て60点となるのは最悪)
→一番重要な仕事で100点を取り、次点の2つの仕事で80点取れれば、残りの重要でない7つをやらなくても命取りにはならない
(4)目的、戦略と戦術
①戦略の実行プラン(Howが戦術)
②大組織だと全社の戦術に落とし込んだものが部門の目的、部門で決めた戦術がチームの目的とカスケードダウンしていく
(5)戦略と戦術の関係
ビジネスの結果は①良い戦略で良い戦術(最善)②良い戦略で悪い戦術(次善)③悪い戦略で悪い戦術(マシ)④悪い戦略で良い戦術(最悪)の順番
→戦略(方向性、選択)を間違えて良い戦術で資源を多く使うのが、傷口がより大きく広がってしまい最悪
(6)4Sチェック
①選択的かどうか(Selective)
やることとやらないことを明確に区別できているかどうか
②十分かどうか(Sufficient)
資源が十分あるかどうか(十分でないのなら、もっと選択的=絞り込みが必要ということ)
③継続可能かどうか(Sustainable)
立てた戦略が中長期に維持継続できるかどうか(他社がすぐ追随可能、自社資源がすぐ枯渇するのはNG)
→相手が追随しづらい(例:追随すると相手自身の強みを消してしまう)戦略がよい
④整合性はあるかどうか(Synchronized)
自社の特徴(強み/弱み、経営資源など)を有効活用できているか
→4S全て合格点は難しい(なんとか3つが及第点、ただし1つだけでも突出していると良い)
→自分の強みが相手の弱みにハマるのが美しい戦略
6.マーケティング・フレームワーク
(1)目的の設定
実現可能性(ギリギリ届く高さを狙う)
→簡単過ぎ、難しすぎはどちらも誰も努力しない
(2)WHO(誰に売るのか決める)
①戦略ターゲット
必ず予算を投下するターゲット(的の大きさ、範囲)のこと(ここから外れたら予算は0円ということ)
→大きなくくりのため、中長期的に固定する(コロコロ変えない)
→小さくなり過ぎないこと(100%達成しても予算未達ではNG)
②コアターゲット
戦略ターゲットの中で、予算を集中投下するターゲット
(3)コアターゲットの見つけ方
①ペネトレーション
ターゲット内でまだ浸透していないグループがないか
②ロイヤルティ
既存ユーザーの中でもっと消費を伸ばせないかどうか
③コンサンプション
既存ユーザがもっと消費量を伸ばせないかどうか
④システム
既存ユーザがもっと商品の種類を増やせないかどうか
⑤パーチェス・サイクル
既存ユーザの購入頻度を上げられないかどうか
⑥ブランド・スイッチ
競合利用ユーザからスイッチする可能性はないかどうか
(4)WHAT(何を売るのか決める)
①例:USJはアトラクションを売っているのではなく、消費者が求めるワクワクする感情(WHAT)を与えている
→アトラクションの装置はWHATでなくHOW
②消費者がそのブランドから求める根源的な価値であるため、通常コンフィデンシャル(非公開情報)
→消費者にインタビュー、アンケートしても出てこない
(5)HOW(どうやって売るのか決める)
①WHATをWHOに届けるための仕掛け(戦術:Execution)のこと
②マーケティング・ミックス(4P)も全てHOW
・Product(製品をどう決めてどう作るのか)
・Price(価格をどう設定するのか)
・Place(販売方法をどう決めるのか)
→自社商品が消費者に届くまでの流通経路の設計
・Promotion(自社商品をどう伝えるのか)