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ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム 古屋 晋一(春秋社)

 

ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム

ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム

 

1.良い耳の作り方

(1)右の聴覚野にあるヘッシェル回の脳部位を発達させる
 細胞数が増えるだけでなく、すぐ一斉に活動しやすい細胞になる
(2)音感教育(鈴木メソッド
(3)楽器を演奏する

2.音楽と脳
(1)ハーモニーはブローカ野(言語の文法処理と同じ部位)
(2)リズムは体の動きに関与する部位(運動前野、小脳)
 →ただし、大脳基底核被殻は小さいほうが良い
(3)右脳が拍子、左脳がリズムの規則性(グルーブ)
(4)ピッチや音色が一次聴覚野、メロディが二次聴覚野

3.失音楽症
(1)ピッチの違いが判別できない疾患
(2)日常会話には支障ないが、自分や周りの唄を聴いても、ピッチ(音のズレ)に気づかない
(3)下前頭回の過剰な発達が、聴覚野と下前頭回を繋ぐ白質(ケーブル)による情報伝達を阻害

4.読譜能力
 楽譜を読み(視覚情報)、その後ピアノでの指の動きに変換する(上頭頂小葉)

5.暗譜能力
(1)左の海馬の前方が大きい
(2)基本的には音のイメージ(聴覚の記憶)が一番強く記憶される
(3)視覚野も使って音を覚えている(音を譜面画像あるいは指の動きとして覚えている)
(4)ピアニストがアルツハイマー発症しても、楽曲は忘れず演奏できた事例あり

6.フォーカル・ジストニア
(1)動かそうとすると意図しないところが動いてしまう(あるいは動かそうとしたところが動かない)
(2)小説家の書痙、ゴルファーのイップスも同じと思われる

7.脱力
(1)力を入れるより緩める時の方がより多くの脳部位が活動している
(2)力を入れるより緩める方のコントロールが難しいといえる

8.練習
(1)1日平均3時間45分以上練習しないと、ピアニストの演奏技術は維持できない
(2)練習の質(強弱などの表現力やリズムなど)は関係なく、量(絶対的な時間)がスキル維持には必須
 →ただし、過去に基礎練習を積んできた実力のあるピアニストの場合

9.感情
(1)感情を込めて演奏すると、心拍数は上がるが呼吸回数は減る
(2)心拍数が上がるのは、演奏することで音楽により感動しているため
(3)呼吸回数が減るのは、集中力を高めて表現しようとするのに深く呼吸するため