エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層 鹿島 茂(ベスト新書)
1.識字率(=読み書き能力=リテラシー)と世界史
(1)男性識字率が50%を超えると、革命(イデオロギー)獲得
①秦の始皇帝は焚書坑儒で撲滅
②フランス革命で社会変革
(2)女性識字率が50%を超えると、近代化(出産調整)が始まり、少子化開始
①自然増と自然減の境界は出生率2.07
②脱宗教化(反カトリック、反キリスト教)すると受胎調節も開始
2.家族システムの類型
(1)親子関係(父権)が強く、同居で、兄弟関係不平等(直系家族)
社会民主主義のドイツ、スウェーデン、日本、韓国
(2)親子関係(父権)が強く、同居で、兄弟関係は平等(外婚制のある共同体)
①共産/一党独裁資本主義のロシア、中国、フィンランド、ハンガリー
②帝国主義で強固な国家となるが、独裁者がいなくなると一気に崩壊(長期継続できない)
(3)親子関係(父権)が弱く、別居で、兄弟関係不平等(核家族)
自由/資本主義のイングランド、アメリカ、オーストラリア
①イングランド=アングル族の土地(アングル・ランド)の意
②イギリス産業革命は絶対核家族が後押し(親子関係ドライで、お金次第のため賃金労働拡大)
→さらにスコットランド(直系家族)と連合した事でのため、うまく知識の蓄積、継承された
(4)親子関係(父権)が弱く、別居で、兄弟関係は平等(核家族)
共和/無政府主義のフランス、スペイン、ポーランド、イタリア(ただし、何れも全土ではない)
①パリ盆地(土地はブルジョワ所有のため私有できない意識が強く残っている)
②フランスは不動産より動産(家具、衣服)に価値をおく(=オシャレになる)
3.直系家族から追い出された次男以下の子供が歴史を動かしている
(1)バイキング(ノルマン人=北の人)、十字軍、明治維新など
(2)英仏百年戦争(次男、三男の傭兵部隊はお金でのみ動くから、王族の経済状態で休戦、再開が繰り返された)
4.ドイツ
(1)ヒトラー誕生の要因
ドイツ(直系家族)には、「忖度」(独裁者の意図を組んで動く)の習慣があるため、ファシズムに転化しやすい
(2)ドイツと移民
①直系家族であるドイツは移民と交わらない(差異主義)
②第二国民がトルコ人、第三国民がシリア人
5.日本
(1)直系(長子相続)の天皇制は明治天皇以降
院政後期(13世紀)以前は直系厳守でなかった(例:平安時代の藤原氏)
(2)信長に焼き討ちされた延暦寺
次男以下が僧兵となっていた(院政時代から武装化していた)
(3)直系家族が定着したのは鎌倉時代後半
(4)江戸は主に直系家族が定着した北東日本からの次男以下の仕事場所(受け口)として発展
(5)西南日本は人口流出することなく、次男以下も近隣居住できた(例:坂本龍馬)
→直系序列化が弱いため、横の連携取りやすく、江戸後期の貧困化から不満増加
(6)今後は少子化人口減少で貧乏になると、経済を支えるための武装として核も必要の可能性有
6.中国
(1)1949年成立のため、ソ連と同じなら2023年崩壊
ソ連は1917〜1991年と80年持たなかった
(2)中央権力崩壊後、軍閥となるが、核を持った国の内戦は非常に危険
(3)大量難民最大の受入国は日本だが、現状は受入拒否している(1982〜2015で30,145件の申請に対し、受理は660件のみ)
7.EU
(1)直系家族の多い北部(ドイツ、北欧)と平等核家族の多い南部(イタリア、スペイン)に分けるとよいかもしれない
(2)フランスがどちらかに入るか次第
北部連合だと最貧国、南部連合だと他国の貧乏国を全て面倒みることになる
8.アメリカ
(1)メルティング・ポット(どの移民も溶け合う)でなくサラダボウル(異なるものがそのまま混ざっているだけ)
9.識字率の遅れた地域
(1)アフリカ60%(男68%、女52%)
(2)アラブ78%(男86%、女70%)
→内婚制(親族内しか結婚できない、いわゆるいとこ婚)のため、女性の社会進出困難のため
10.フランスとイスラム教
(1)共和国憲法第一条
「不可分なライック(脱宗教的)で民主主義」としている
(2)宗教は出身国籍による統合は認めない
(3)公共の場で民族的、宗教的な振る舞いはできない(例:イスラム・スカーフ事件)