観想力 三谷 宏治(東洋経済新報社)
1.常識を破壊する
(1)空気はなぜ透明か
①そもそも人にとって透明なものを空気と呼んでいるから
②実際の空気(大気)は可視光線の波長のみよく通し(透明)、人の目にも色として見えるだけ
(2)東京はなぜ低層か(居住地区含め高層化されないのか)
①幹線道路率が低い(マンハッタンが38%に対し、数%しかない)から(幹線道路もない所に高層ビルは建てられない)
②過剰な私権保護により区画整理事業が進まないため
③職場と住居は分離すべしという政策の錯誤を放置しているため
(3)イワシはなぜ高くなったのか
①大衆魚(イワシ、アジ、サンマ、サバ)の数は周期的に変動しているため
②1950〜1990の40年間で最も多い大衆魚はサンマ→サバ→マイワシと交替している(ただし、原因は不明)
(4)クラスに同じ誕生日の人はいるか
①クラス40人なら40/365だから約9分の1と考えるのは間違い
②40人だと約9割の確率で1組以上同じ(20人なら約5割)
③32人以上なら2組以上の確率が1組だけより多くなる
(5)地球は温暖化しているか
①1910〜1940の30年間と1976〜(現在)の区間のみであれば温暖化
②100万年の単位で見れば、約10万年のサイクルで氷河期を繰り返している
③現在は間氷期(暖かい時期)だが、急速に寒冷化しつつある途中
④300万年前から気象変動は激しくなっており、寒冷化傾向が強い
(6)平均値の罠
①ベル型(へ型)でも分散・バラバラだと、平均値付近には対象がほとんどいない
②べき乗分布(L型)はパレートの法則に従い、上位20%が小数でも影響力が大きい
→国民所得分布、英単語出現頻度、ノーベル賞国別受賞者数、Webページのリンク数など
(7)働きアリの法則
①上位2割を取り除くと、代わりに次に働くアリの労働が増えるが、働かないアリは何があっても働かない(よって、生産性は少し落ちる)
②働かないアリは働きアリより広範囲にウロウロとすることで、新しいエサ場の発見に貢献している(ただし、ウロウロするだけ)
(8)ヒューリスティック・バイアス
①利用可能性(思い出しやすいものを起こりやすいと誤認)
②代表性(典型事例を他の事例にも当てはめてしまう)
→「三度目の正直」「二度ある事は三度ある」何れも間違い
③係留(最初の印象にこだわり過ぎ、推測が当たると過信してしまう)
→船が最初に錨を下ろす(係留)した地点から遠くまで動けないのと同じ
(9)オールラウンドプレーヤーのコツ
①幅広く学ぶには、効率が重要(重要そうなものをいかに早く見極めるか)
②形勢不利な場合、混沌(カオス)に引きずり込む
2.正しい視点を持つ
(1)相対シェア1.7の壁
二位以下でも一位との相対シェア1.7以下であれば、自分より下位を叩いてシェアを叩くとよい
(2)高シェア維持の成功3パターン
②ニッチ集積型成功(例:カシオの電子辞書)
→市場自体が細分化(特定用途、ニーズ向けにそれぞれ拡大)したため
③キーデバイス型成功(例:CPUのインテル、プロジェクター用液晶パネルのエプソン)
(3)日本メーカー生き残り条件
①製品自体の難しさ(摺り合わせ開発)
②キーデバイスが進化途上でかつそれを内製化
3.高い視座から眺める
(1)市場統合による逆転(例:マイクロソフトのOffice)
ニッチ市場(ワープロ、表計算、プレゼンテーション)で負けていたため、市場統合(OS共通のGUI、Officeという統合ブランド)した
(2)顧客と共に老いない(例:少年ジャンプ)
新人作家発掘型で小学生にニーズを集中し続ける戦略