理性の限界 高橋 昌一郎(講談社現代新書)
理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
- 作者: 高橋昌一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/06/17
- メディア: 新書
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1.選択の限界
個人では成立している好みの順番が、集団では成立しなくなる事がある
(2)ボルダのパラドックス
複数の選択肢から単数を選択する単記投票方式そのものが民主的でない(多数決の矛盾)
(3)アロウの不可能性定理
完全に民主的な意思決定を実現する事は論理的に不可能
(4)ギバード・サタースウェイトの定理
独裁者の存在を認めるような投票方式でない限り、どんな投票方式も戦略的操作が可能になる
(5)囚人のジレンマ
①TFT(ティット・フォー・タット)のしっぺ返し戦略が最強
→最初は「協調」を選択し、次からは相手に合わせる(相手が協調したら協調し、裏切ったら裏切る)
②個人的合理性より集団的合理性での選択がハイリスク・ハイリターンとなっている所がミソ
(6)ミニマックス理論
①ゼロサムゲームの場合、最強の戦略
②まず自分が負けない(損失を最小限)ようにするのが最大の利得に繋がる
(7)ナッシュ均衡
①非ゼロサムゲーム(プレーヤーの損得合計がゼロでない=合計に差が出る)の場合、双方が落ち着く戦略
③チキンゲーム(双方が裏切った場合、ゲーム終了)の場合、片方が走り続け、片方が避けるのがナッシュ均衡
(8)社会的チキンゲーム(例:救命ボートから誰か一人降りなければ、全員が死んでしまう状況)
2.科学の限界
測定に用いる光が測定対象に影響を与えてしまうため、対象の位置と運動量を同時測定できなくなる
(2)ボーアの相補性解釈
①相反する2つの概念が補い合うことで1つの新しい概念を形成する
②電子は波であると同時に粒子であると解釈する
3.知識の限界
(1)抜き打ちテストのパラドックス
いつ行うかわからない条件で、月〜金のいずれかでテストを行うとして、
金曜になってテストを行うのは抜き打ちと言えるかどうか
→テストを行う日を決める人とそれを当てる人が異なっている
(2)自己言及のパラドックス(例:私は嘘つきである)
(3)スクリブンの卵(箱1と箱2どちらに卵が入っているのを当てる)
①箱1、箱2の順に開けてみて、どちらに「予期できない」卵が入っているかを予想できるか
②箱1を開けて卵がない時点で、箱2に入っているのは「予期できた」卵となってしまう
システムSが正常で真であっても、Sでは証明できない命題が存在する
(5)自然数論の未解決問題
4以上の偶数は素数の和である(例:8=3+5)
②奇数の完全数(約数の和で表される数)は存在するか
現在まで発見された44個の完全数は全て偶数(例:6=1+2+3)
→何れも証明も反証もできない命題(ゲーデル命題)かもしれない
システムSがの真理性は、Sの内部では定義不可能
(7)ランダム性とは
情報数論では、これ以上圧縮できない数列の事(あらゆるパターンに属さない)
システムSの内部にランダム性を証明できないランダム数(ゲーデル命題)が存在する
→純粋数学(自然数論)の世界もランダム(サイコロを振る)